Count Dracula (1970)
Director:ジェス・フランコ
Cast:クリストファー・リー / ハーバート・ロム / クラウス・キンスキー / フレデリック・ウィリアムズ
Production Company:タワー・オブ・ロンドン
ジャン・ローランと並んで低俗なポルノ紛いの吸血鬼映画を量産したことでも知られる、ジェス・フランコの珍しく正統派のドラキュラ映画。ドラキュラを演ずるは何とクリストファー・リー、対するヴァン・ヘルシングにハーバート・ロム、精神を病んだレンフィールドにはクラウス・キンスキーと、低予算、乱作で知られるジェス・フランコの作品としては非常に豪華なキャスティングに驚かされる。
この『吸血のデアボリカ』(1970)は原作に忠実に描かれた作品として紹介されていることが多いが、その実脚本が原作に忠実であるのは前半部分のドラキュラ城内部でのやりとりの一部でしかない。しかし、リー演ずるドラキュラ伯爵は小説と同様に口髭をたくわえた白髪の老紳士として登場し、犠牲者の血を吸うことで徐々に若返っていく。この辺りはハマーが描かなかったドラキュラ像であり、リーの数多いドラキュラ出演作の中でも珍しい演出として我々を楽しませてくれる。
とは言えジェス・フランコの演出は全体を通じて凡庸であること極まりなく、退屈な演出、稚拙なカメラワーク、破綻寸前の脚本等、本作はキャスティングの豪華さにも関わらず平凡で退屈な作品として留まっていることも事実である。カルト的な人気を持つジェス・フランコではあるが、所詮はカルト監督でしかなく、ハマーの黄金期を支えたテレンス・フィッシャーやヴァル・ゲストといった名監督らには遠く及ばぬ素人監督というのが正直なところであろうか。ドラキュラの独白をリーが迫力充分にみせるシーンや、ハマー以上に官能的な雰囲気を醸し出している吸血シーンぐらいしか本作の見るべき点はない。
なお本作品はDVD黎明期に国内盤がリリースされたが、日本語字幕がなく音声のみの日本語吹替/英語切り替え、画質が恐ろしく悪い、等ユーザを舐めきった仕様であまりオススメできない品質のものであった。
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