Cry of the Banshee (1970)
Director:ゴードン・ヘスラー
Cast:ヴィンセント・プライス / ヒュー・グリフィス / エリザベート・ベルクナー / ヒラリー・ドワイヤー
Production Company:AIP
冒頭にポオの「鐘のうた」の一節が引用され、AIPがヴィンセント・プライス主演で製作した一連のポオ・シリーズに連なる作品かのようにはじまるが、内容はポオとは関係のないオリジナルの物語である。ゴス界隈ではお馴染みのSiouxsie and the Bansheesのバンド名は、本作に由来している。
16世紀のイギリス。残忍で放蕩な地方領主エドワードは魔女狩りに明け暮れる日々を送っていた。ある日、エドワード達は異教徒を崇める集団を痛めつけ領地から追放するが、異教徒の老司祭ウーナは彼ら一族に呪いをかける。やがてエドワードの息子ショーン、妻のパトリシアと、一族は一人、一人と謎の魔物によって殺されてゆくのであった。
本作『バンシーの叫び』(1970)には、AIPによって再編集された87分の劇場公開版と本来の91分のディレクターズ・カット版が存在する。AIPによる再編集はかなり大幅に手が加えられており、ヌードシーンや残虐シーンのカットに留まらず、エピソードの順序の入れ替えやテリー・ギリアムによるオープニング・アニメーション、ウィルフレッド・ジョセフによるスコアまでが差し替えられている。結果として劇場公開版はテンポは良いものの、物語の筋が把握しづらく破綻しかかった作品であるかのような印象を与えるものとなってしまった。
残念ながら以前国内でリリースされたVHSもこの劇場公開版をマスターとしており、編集のマズさに加えてプライス演ずる領主エドワードやその一族が皆非道であり嫌悪感を抱かせることや、何と肝心のバンシーは登場しないため、退屈な作品として記憶されていることだろう。しかし、ディレクターズ・カット版を観れば、本作は実はそこまで酷い出来ではないことに気付かされる。ラストの展開も一工夫あり、凡作と括るには実に勿体ない作品である。
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