Love at First Bite (1979)
Director:スタン・ドラゴッティ
Cast:ジョージ・ハミルトン / スーザン・セント・ジェームズ / リチャード・ベンジャミン / アート・ジョンソン
Production Company:AIP
私生活でもプレイボーイであったジョージ・ハミルトンが製作総指揮、主演したコメディ映画。フランク・ランジェラ主演の『ドラキュラ』(1979)、クラウス・キンスキー主演の『ノスフェラトゥ』(1979)、スティーブン・キング原作の『死霊伝説』(1979)、そして『ドラキュラ都へ行く』(1979)と、1979年は吸血鬼映画が豊作であったが、その中で最も高い興行収入を叩き出したのが本作である。本家ユニヴァーサルの正統派ドラキュラ映画よりコメディ映画の方がヒットしたというのは、何とも複雑。
共産党政府によって城を没収されてしまったドラキュラ伯爵は、かねてより雑誌で眺めては熱をあげていたモデルのシンディを手に入れるため、ニューヨークへと旅立つ。下僕のレンフィールドに彼女の居場所を調べさせたドラキュラは無事シンディと一夜を共にするが、彼女には主治医であり恋人である精神科医のジェフがいた。奇遇にもジェフはヴァン・ヘルシングの孫であり、ドラキュラが吸血鬼であることを見抜き、彼女を取り戻そうとするのであったが。
レンフィールドを演ずるアート・ジョンソンがドワイト・フライの笑い方を真似ている分かりやすいパロディから、ドラキュラがイギリスに渡ったのが1931年(つまりは『魔人ドラキュラ』(1931)の公開年)だと話す分かりにくい小ネタまで、『魔人ドラキュラ』のパロディが見られはするものの、全体として本作はラブ・コメディであり流石に現代のリズムやテンポからすると笑いの質はやや古めかしい。
そして79年版ドラキュラにも見られた傾向であるが、本作にもウーマンリブの時代的影響が強く感じられる。シンディは性に奔放であり、吸血鬼となることを自らの意思で決定する。女性はただただ怯えドラキュラに血を吸われるだけのか弱い存在ではなくなり、シンディがドラキュラに噛みつくシーンが象徴するように、女性はドラキュラと対等の、いや、むしろ古き男性的ロマンティシズムを破壊する強い存在となったのである。ドラキュラ映画は時に時代を映す鏡ともなる。
amazonでこの映画を検索