Salem's Lot (1979)
Director:トビー・フーパー
Cast:デビッド・ソウル / ジェームズ・メイスン / ボニー・ベデリア / レジー・ナルダー
Production Company:セレンディプティ
『死霊伝説』は、スティーブン・キング初期の長編小説である『呪われた町』の忠実な映画化作品であり、現在に至るまでのキングの映画化作品の中でも傑作と評判の高い吸血鬼映画である。当初はTV映画用に2時間枠で3夜用に制作され、183分という膨大な分数のTV映画であったが、後に劇場公開用に111分に編集され公開もされている。
キングの小説は登場人物の私生活を詳細に描くことで知られているが、本作も原作に忠実にその登場人物達の描写にかなりの時間を割いて作られている。そのため物語が動き出すまでの間かなりの時間を延々と過ごさなくてはならないのであるが、本作に限って言えばそれはまずまずの成果を挙げていると言うことができるだろう。閉鎖的な田舎の住人達の生活を描くことで、閉ざされた生態系に吸血鬼というより強い存在が入り込むと、いかにもろく人間の生態系を吸血鬼が支配しうるかという、その恐ろしさが非常に上手く描かれている。吸血鬼となった幼い子供はその兄を、そして子供達はその母親を、男はその恋人を、閉ざされた地域の密着性を逆手にとって爆発的な勢いで支配していく吸血鬼は人間の生態系を侵す病魔そのものである。
ただ、原作では吸血鬼バーロウは人間的な外見をしていたのに対して、本作ではノスフェラトゥよろしく怪物然とした存在となっているのが少々残念ではある。十字架すらも握りつぶすバーロウは、もはや吸血鬼というよりもただの怪物として描かれており、その青い肌の色も合わさって強烈なインパクトを放っている。これは恐らくバーロウによって吸血鬼とされた住人達が招待されなくてはその家に入れない等、非常に古典的なスタイルの吸血鬼として描かれているため、その差別化のためであるとも思われるが、正統派ドラキュラスタイルでもよかったのではないかと多少の疑問が残る点である。
本作は『悪魔のいけにえ』(1974)のトビー・フーパーが監督をしていることもあり、TV映画とはいえその枠に留まらない暴力描写や映画並みのクオリティの高さを誇っており、劇場映画と比較しても全く遜色のない作品である。スティーブン・キング特有の冗長とも言える現実味溢れる個人の生活描写による、恐ろしい程のテンポの悪さを我慢することさえできれば、雰囲気も良い一級の吸血鬼映画として楽しむことができると言えよう。
amazonでこの映画を検索