Lifeforce (1985)
Director:トビー・フーパー
Cast:マチルダ・メイ / スティーヴ・レイルズバック / ピーター・ファース / パトリック・スチュワート
Production Company:ゴーラン・グローバス
私と同世代の男性ならば、日曜洋画劇場で本作が放送されると知るや否や、何とか親の目を盗んで観ることはできないものか、あわよくばビデオに録画することはできないものか、と新聞のラテ欄とにらめっこしたことが一度や二度はあるのではないだろうか。とにかく本作の魅力はそこにある、いや、むしろそこにしかないと言っても過言ではない。
ハレー彗星の調査を行っていたチャーチル号は、彗星の近くで謎の巨大な宇宙船に遭遇し、その船内で蝙蝠のような姿をした異星人の無数の死体と、全裸の男性2体と女性1体を発見し持ち帰る。しかし、地球で女性型の異星人を解剖しようとすると、異星人は意識を取り戻し、警備員の精気を吸い取りロンドン市内へと姿を消す。犠牲者達は同様な吸精鬼として甦り、やがてロンドンは甦った死者の群れで溢れかえるのであった。
本作は監督トビー・フーパー、脚本ダン・オバノン、特撮にILMのジョン・ダイクストラ、音楽ヘンリー・マンシーニ、原作コリン・ウィルソンという錚々たる顔ぶれで2500万ドルという破格の費用をかけて製作された超大作B級映画である。これだけのスタッフと予算を投じたにも関わらず、観終わった後にはストーリーや演出は全て記憶の彼方へ流れ去り、ただただマチルダ・メイの姿態しか残らないという何ともな作品として仕上がった。怪奇映画に性的な要素が介入することを極端に嫌う私であるが、思春期の頃の私は作品全体を通して一糸纏わぬ姿で出演する、このマチルダ・メイの魅力に抗うことはことはできなかった。
興行成績が振るわなかった本作であるが、今観返してみると、なかなかどうして面白い。一流のスタッフが製作しているだけあって、前半の宇宙船でのくだりは『エイリアン』(1979)に引けを取らない異様な緊張感であるし、一転して後半のロンドン市内が阿鼻叫喚の地獄絵図と化すさまは『ゾンビ』(1978)を超えるスケールとテンポの良さ。映画全体をドラマティックに盛り上げるヘンリー・マンシーニの音楽も流石の仕事ぶりである。
異星人が人間の精気を吸い取る吸血鬼(正確には吸精鬼)であり、その退治方法は鉄の杭で心臓を打ち抜くという古典的な手法である点も怪奇映画的で面白い。しかし、どれだけ冷静に映画を論評しているフリをしようとも、やはり最後にはマチルダ・メイの姿しか記憶には残らないのであった。
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