Street of Crocodiles (1986)
Director:ブラザーズ・クエイ
Cast:フェリクス・スタビンスキー
Production Company:アトリエ・コーニンク
それはまだ私が16歳だった頃の話である。高校の美術の授業中に映画鑑賞が設けられ、そこで本作『ストリート・オブ・クロコダイル』(1986)が流されたのであった。私はその退廃的で奇怪な映像に凄まじい衝撃を受け、取り憑かれたように美術の先生にビデオの情報を聞き、高校生にとっては決して安いとは言えない金額のVHSを大急ぎで購入したのであった。自分はこの映像を持っていなくてはいけない、そんな強烈な強迫観念を受けた映像だった。
それほどの衝撃を与えた本作は、クエイ兄弟によるストップ・モーションを用いたアニメーション映像である。ひとりでに逆回転しだし地面から抜け出てくるネジ達、一定の間隔でシンバルを狂ったような速度で叩くサルの人形。そんな奇妙な世界の中へと、迷い込んでしまった一人の人物。やがて彼は脳が空洞の機会仕掛けの人形達が働く仕立屋へと辿り着くのであった。
この怪奇幻想味溢れる本作は、合理性や理屈が通じない奇怪で悪夢のような世界観が支配している。この悪夢のような映像に酔いしれることこそが本作の最大の魅力である。クエイ兄弟は本作の他にも短編をいくつも制作しているが、何と言っても本作こそが彼らの最高傑作であろう。その完成度は彼らが師と仰ぐヤン・シュヴァンクマイエルすらも上回るのではないかと思う。
怪奇幻想が好きで本作を未見の方は、とにかく黙って観ることをオススメしたい。私と同じように、自らの暗黒精神の人生がより豊かになること間違いなしの傑作である。
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