Wolf (1994)
Director:マイク・ニコルズ
Cast:ジャック・ニコルソン / ミシェル・ファイファー / ジェームズ・スペイダー / ケイト・ネリガン
Production Company:コロンビア
怪奇的要素と恋愛を絡ませるという、90年代のゴシック・リバイバルの定石を踏んだ、狼男映画。『狼男アメリカン』(1981)で特殊メーキャップを担当し、ベスト・メイク賞を受賞したリック・ベイカーが本作品でも特殊メイクを担当しているが、『狼男アメリカン』と比較するとジャック・ニコルソンの素顔を生かした、より自然なメイクであるのが特徴的である。とはいえ、やはり怪優ニコルソンの狼男は殆ど素顔であるにもかかわらず、非常に強烈なインパクトをもっており、これはもうキャスティングの勝利と言うしかないだろう。
スプラッタ映画と違い、古典的な吸血鬼や狼男がテーマである場合、恐怖の対象であるのは非常に人間に近い存在であり、ジェイソンだのフレディやゾンビと比べ理不尽なまでの超自然的力を持ち合わせていない事が多い。吸血鬼も超自然的な力は持ち合わせてはいるが、日光や十字架、ニンニクなどの制約があり、狼男も一般的には満月の夜以外はただの人間である。従って、古典的な怪奇映画の恐怖の対象とは、一旦その弱点を把握してしまえばさして恐れる物ではなく、と同時に映画としての魅力も薄くなる危険性を含んでいる。
そのため、怪奇映画では如何に魅力的な恐怖の対象として彼らモンスターを描くかが重要なポイントであり、またそれだけの魅力ある怪奇俳優がキャスティングされる必要性があると私は考えている。その点で本作品はニコルソンという現代の怪優を得て、非常に恵まれた傑作となっている。90年代の一連のゴシック・リバイバル作品の中でも私はこの『ウルフ』が屈指の完成度を持っていると思う。
まあ、個人的に好きな女優、ミシェル・ファイファーが出演しているというのもその評価を高めているということもあるにはあるのだが・・・。
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