ВИЙ (2014)
Director:オレッグ・ステブチェンコ
Cast:ジェイソン・フレミング / アンドレイ・スモリアコフ / アレクセイ・チャドフ / アグニア・ディコフスキーチェ
Production Company:RFG
2009年のニコライ・ゴーゴリ生誕200周年を迎えた中、ロシアで90億円という巨額の製作費をかけハリウッド映画にもひけをとらない規模で製作された、『妖女』の2度目の映画化作品。
18世紀。地図製作のための装置を発明したジョナサンは、世界地図を完成させるべくイギリスを出発する。旅を進めるうちにウクライナの森へ迷い込んでしまったジョナサンは、そこで外界から孤立した村へと辿り着く。その村は、9ヵ月前に変死した地主の娘にまつわる魔物の恐怖に支配されていた。ジョナサンは地主の依頼を受け、封印された教会を中心とした村の地図の製作に取り掛かるのであったが・・・。
ゴーゴリの『妖女』と言えば、カルト的傑作の『妖婆死棺の呪い』(1967)が挙げられるが、本作はロシア映画もここまできたのかと感動せずにはいられぬレベルのCG全開で教会で蘇り動き回る妖女がとにかく圧倒的な迫力を持つ。ティム・バートン作品を彷彿とさせる美しくも陰鬱な映像の中、うごめく妖女や魔物達の造形は非常に禍々しくも美しい。本作の妖女は我が日本の貞子に匹敵するだけの存在感を放っていると言えるだろう。
しかしその一方で脚本はやや稚拙であり、ジョナサンの冒険譚とゴーゴリの原作がうまく噛み合っていない。また、肝心のホマ―の物語を語らせる構成も宜しくなく、物語への没入感を大きく削ぐ構成となってしまっている。最終的に物語が一応の論理的な決着を見せてしまうところも怪奇映画としてはガッカリさせられる。
それでもやはり妖女のシーンの出来栄えは秀逸であり、この迫力ある映像を観るためだけでも本作は十分に価値がある。近年私が観た怪奇映画の中では、最も興奮した「怪物シーン」である。
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