Psycho IV: The Beginning (1990)
Director:ミック・ギャリス
Cast:アンソニー・パーキンス / ヘンリー・トーマス / オリヴィア・ハッセー / CCH・パウンダー
Production Company:スマート・マネー
前作『サイコ3 怨霊の囁き』(1986)の撮影中にエイズに感染していることが判明したアンソニー・パーキンスがノーマン・ベイツを演じた最後の作品。本作は劇場公開作品としてではなく、TVムービーとして製作された。
「母殺し」をテーマとしたラジオ番組にエドと名乗るリスナーからの電話がかかってくる。エドは自らが母親を殺害しただけに留まらず、過去に多くの殺人を犯したこと、そして今から新たな殺人を行おうとしていることを受話器越しに告白する。ラジオDJに促されるかのように、自らの生い立ちと殺人を語りだしたその男は、そう、ノーマン・ベイツその人だった。
前作がセルフ・パロディのようになってしまったことからの反省か、若き日のノーマン・ベイツに焦点を当て、バーナード・ハーマンのお馴染みのスコアで幕を開ける前日譚。青年時代のノーマンを演ずるは『E.T.』(1982)の子役ヘンリー・トーマス、母親は布施明の元妻でもあったオリヴィア・ハッセーが演じている。初作から30年、遂に我々は4作目にして「動く」母親の姿を目にすることになる。
ノーマン・ベイツの人格はどのような生い立ちを経て形成されていったのか、というテーマは確かに興味深い。その期待を一身に受ける母親を演ずるオリヴィア・ハッセーの存在感は、情緒不安定で禁欲的でありながらも艶めかしく、極めてその期待に沿うものと言えるだろう。しかし、個人的には『キャリー』(1976)の母親レベルまで突き抜けても良かったのではないかと多少の物足りなさを覚えなくもない。
TVムービーという予算的制約もあってか、アンソニー・パーキンスの登場シーンはほぼ受話器越しに話すシーンに限定されてしまっている。それでも、声色や表情だけで観る者を不安にさせる演技は流石の一言。本作公開の2年後にこの世を去る、アンソニー・パーキンスによる最後のノーマン・ベイツの雄姿である。
amazonでこの映画を検索