The Brides of Dracula (1960)
Director:テレンス・フィッシャー
Cast:ピーター・カッシング / デビッド・ピール / イヴォンヌ・モンロー / フリーダ・ジャクソン
Production Company:ハマー
ハマー・フィルムが『吸血鬼ドラキュラ』(1958)に続いて制作したシリーズ第2弾。とは言うものの、本作はタイトルにあるドラキュラは登場せず、前作に引き続きピーター・カッシングがヴァン・ヘルシングを演じた番外編的な位置付けの作品である。ドラキュラに代わり登場するのは、当時40代のデビッド・ピール演ずる20代という設定のマインスター男爵。不自然な鬘とメイクにより西洋人形のような印象を受ける何とも迫力のない吸血鬼である。
前作『吸血鬼ドラキュラ』で強烈な印象を与えたクリストファー・リーの不在、さらにマインスター男爵の精彩を欠いた外見と、吸血鬼そのものはやや魅力に劣るのは否めないが、本作品の真髄は実は吸血鬼にあるのではなくヴァン・ヘルシングその人にある。ドラキュラのライバルとして理知的にドラキュラを追い詰めたピーター・カッシングのヒーローぶりは前作以上に強調され、まさに怪奇映画界のシャーロック・ホームズ的な存在感を放ち映画全体のテンションを高めるのに大きく貢献している。
事実、カッシングはハマーの『バスカヴィル家の犬』(1959)やイギリスBBCのテレビシリーズでホームズを演じてもおり、カッシング演ずるヘルシングはホームズを強く意識させるキャラクターであったと言える。
吸血鬼に噛まれたヘルシングが傷跡を聖水と焼き篭手で清めるシーンや、風車小屋でのマインスター男爵との対決等の見せ場も充分にあり、監督テレンス・フィッシャーのアクション性を高めた小気味よい演出は健在、カッシング演ずるヴァン・ヘルシングも凛々しくアグレッシブと、本作はハマー・フィルムの映画の見せ方が十分に発揮された快作である。ドラキュラ伯爵そのものが登場せずマインスター男爵も魅力に乏しいため、知名度も人気もやや低い作品ではあるが、後にハマーが生み出す幾多のドラキュラ映画と比較すればその質は極めて高い作品であると言えよう。
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