The Oblong Box (1969)
Director:ゴードン・ヘスラー
Cast:ヴィンセント・プライス / クリストファー・リー / アレステア・ウィリアムソン / ルパート・デイビス
Production Company:AIP
ロジャー・コーマンが離れた後のAIPのポオ・シリーズ第10作目。ポオの「長方形の箱」を原作とする、となってはいるものの、物語は全くのオリジナルであり最早ポオ・シリーズとは名ばかりとなり、内容も低下の一途を辿っていったことを如実に示す作品である。
イギリスの貴族であるジュリアンは、アフリカで呪いを受け醜い顔となってしまった弟エドワードを屋敷に監禁していた。エドワードは自らの呪いを解くため、弁護士のトレンチを通じ屋敷を脱出しようと試みるが、トレンチの裏切りによって生きたまま埋葬されてしまう。一方、医学のために墓を暴き死体を調達していたニューハート医師は、偶然にもエドワードの棺を掘り起こしてしまい、生き返ったエドワードの復讐に巻き込まれていくのであった。
本作『呪われた棺』(1969)はAIPのポオ・シリーズにクリストファー・リーが初登場し、ヴィンセント・プライスと初共演となった記念すべき作品である。だが、驚くべきことに共演シーンはわずか1分にも満たず、しかもリーは息絶える間際というまさかの展開。裏に撮影日程の事情があったことは想像に難くないが、我々の期待を徹底的に裏切ったゴードン・ヘスラーは『バンパイア・キラーの謎』(1970)でも同様のことをやり、総スカンを喰らうこととなる。
しかも本作は物語自体も随分と酷いが、ゴードン・ヘスラーの平坦な演出もこれまた随分と酷い。幾度か描かれる殺人シーンは刃物で首を掻き切る演出を繰り返すだけで単調なことこの上ないし、刃物で首をなぞって血糊をつけていることが丸分かりで恐怖演出も弱い。また酒場での乱痴気騒ぎのシーンのように、ダラダラと不要に長い編集が全体を通じて見られテンポも悪い。リーとプライスの初共演作がこのような駄作となったことが本当に残念でならない。ゴードン・ヘスラーは、こうして我々怪奇映画ファンの記憶にその悪名を刻むこととなったのである。
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