The Raven (1963)
Director:ロジャー・コーマン
Cast:ヴィンセント・プライス / ボリス・カーロフ / ピーター・ローレ / ヘイゼル・コート
Production Company:AIP
AIP/ロジャー・コーマンのポオ・シリーズ第5作目。日本公開時の『忍者と悪女』という邦題には呆れを通り越し、最早ただただ笑うしかないところであるが、本編を見ると「さもありなん」とその大笑いなネーミングも一理ある・・・と思わせるところが大蔵貢の恐ろしいところである。原作はポオの代表的な詩である「大鴉」であり、以前発売されていた国内盤ビデオでは『大鴉』とされていた。
魔術師クレイヴンの元に、一羽の鴉がやってくる。驚くべきことにその鴉は口をきき始める。何と鴉は邪悪な魔術師スカラバスによって姿を変えられたベドロ博士であったのである。クレイブンの術によって人間の姿に戻った彼は、スカラバスの城で2年前に死んだはずのクレイブンの妻を見かけたと言って譲らない。そこでクレイブンは、長年に渡り避け続けてきたスカラバスとの対決を誓い、事の真相を確かめるべく彼の城へと向かうのであった。
さて、本作はポオの「大鴉」が原作とは言うものの、その実ポオとは殆ど関係なく、「魔術合戦」とは名ばかりの余りに馬鹿げた「手品合戦」が繰り広げられるコメディ・タッチの作品である。キャスティングの豪華さや、楽しそうに演技をするカーロフやプライスの伸び伸びとした雰囲気故に、好事家達の間では中々評判の良い作品ではあるが、映画作品としては余りにくだらないことこの上ない。つまり評判の良さは裏を返せば、キャストの楽しそうな雰囲気だけしか見るべき点がないということを暗に意味するのである。
ヴィンセント・プライスとピーター・ローレの凸凹なコンビも、前作『黒猫の怨霊』(1962)での余りに愉快な掛け合いと比べると、やや空回りな感が強い。特に、鴉から人間に戻った際のローレの姿と言ったら!その滑稽な姿は笑いを呼ぶどころか、学生の演劇発表会を思わせる、見てはいけないものを見てしまったかのような寒さに身を震わせること必至である。作り手達がクスクス笑いながら意識的に滑稽さを狙っていることは充分に伝わるものの、受け手は一体どこで楽しめばよいのか、と首を捻りたくなる一品。
なお、本作には若かりし頃のジャック・ニコルソンも顔を出している。
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