The Conjuring (2013)
Director:ジェームズ・ワン
Cast:ヴェラ・ファーミガ / パトリック・ウィルソン / リリ・テイラー / ロン・リビングストン
Production Company:ニュー・ライン・シネマ
『ソウ』(2004)の監督ジェームズ・ワンが実在の心霊研究家であるウォーレン夫妻を主人公に、彼らが手掛けた「ペロン一家事件」の実話をもとにした映画化作品。映画は世界的なヒットを記録し、死霊館シリーズ、スピンオフを含めた死霊館ユニヴァースと呼ばれる一連の作品群を生み出すこととなった。
ロードアイランド州の片田舎にある屋敷を購入したペロン夫妻が5人の子供達を連れて引っ越してくる。しかし、入居翌日から妻のキャサリンには謎の痣ができはじめ、四女のシンディは夜毎に夢遊病を繰り返し、五女のエイプリルは見えない友達と話し出す。奇怪な現象は止むどころか、日々激しさを増していき、ペロン夫妻は著名な心霊研究家であるウォーレン夫妻に屋敷の調査を依頼するのであった。
興行的にも成功し、「怖い」と世間の評判もすこぶる良い本作『死霊館』(2013)であるが、その実ホラー映画が好きで観慣れた方々ならば別段怖い作品ではない。とても丁寧で真面目に作り込まれた正統派オカルト映画であるがため、随所に見られる演出に「怖い」という感情がくるよりも、先にニヤリとしてしまうのである。
ペロン一家が屋敷に初めて到着した際、無人であるはずの家の中からあたかも何者かが様子を窺っているかのような視点でカメラが動く演出。風で飛ばされたシーツが何もない宙で何かに巻き付いてヒト型を描き出す演出。悪魔祓いで布を被せあえて悪魔の表情を見せない演出等、素晴らしく効果的な演出がいたる所で不安を掻き立てる。
しかしその一方で、「ペロン一家事件」とは直接の関係のない「アナベル事件」にかなりの時間を割くことでシリーズ化やスピンオフへの布石をしたたかに脚本に練り込んでいる点や、家族愛や夫婦愛を強く押し出している点は鼻につく。もっと怪奇映画は陰惨であってよいのではないかと私は思うが、そうすると一部の愛好家のものだけとなり、商業的な成功が見込めないという判断もあるのだろう。そういった点も含め、非常に良くできた作品である。
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